R&D
琥珀の研究開発




























琥珀バイオテクノロジーによる
琥珀研究の歴史とその成果を紐解きます。

近藤恵二
琥珀バイオテクノロジー株式会社 非常勤取締役
「琥珀にはどんな作用があり、何がどう作用するのか、科学的に実証されているものは世界にほとんどありませんでした」
琥珀バイオテクノロジーは、まったくの「未知への挑戦」として琥珀研究の歴史を歩み始め、現在では膨大な研究成果と琥珀に関するナレッジを獲得しています。琥珀の基礎研究を始めて最初に取り組んだのは、コハクパウダーの開発でした。ロシアで琥珀療法に使われてきたパウダーよりもさらに微粒子にすべく、新たな琥珀の粉砕技術を開発。化粧品にも配合できる、よりきめ細かくなめらかなパウダーを作り出すことに成功しました。そしてこのパウダーは、コハクパウダー®(PD)として2005年に〈化粧料・天然色素退色防止〉に関する特許を取得(特許第3725848号、特許第3741429号)することができました。また、(現)国立 研究開発法人 理化学研究所との琥珀に関する共同研究の開始を機に、有効成分の抽出・精製の研究は大きく加速していくことになります。

「何に、どんな温度で、どの程度の時間浸すことで、どんな成分を抽出できるか、試行錯誤を繰り返しました」
美肌づくりに貢献する「皮膚ターンオーバー促進効果(2008年)」と「ヒアルロン酸産生促進効果(2009年)」については、まず微粒子の琥珀パウダーを用いたエキスの抽出に苦心し、途方もない数の失敗と修正を重ねた末に発見できた効果です。これらの効果に関しては、2012年にコハクエキス®リペア(RE)として特許を取得しました(特許第4953204号、特許第4953203号)。また、別の抽出法から、「育毛効果(2010年)」「美白効果(2011年)」を発見し、それぞれコハクエキス®グロウ(GR)、コハクエキス®ホワイト(WH)として2015年に特許を取得することにも成功しました(特許5858561号、特許第5858562号)。

「新たな生理活性の可能性を秘めた素材として注目されています」
琥珀バイオテクノロジーは、琥珀の健康・美容効果など、琥珀が持つ未知なる可能性を引き続き探求すべく、2017年に筑波大学発ベンチャーとして、筑波大学内に中央研究所を設立しました。植物に含まれる物質には、多くの有用な生理活性が報告されています。琥珀には植物の樹脂が化石化する過程で生じる未知の成分が含まれており、様々な可能性を秘めた素材として期待されています。我々はこれまでに、発見した琥珀に関する研究成果を論文・出版物として数々発表しており、特に2013年、日本美容皮膚科学会誌に掲載された論文は、最優秀論文賞を受賞するに至りました。産学の協力による飽くなき研究の日々と、それを支える研究者たちの情熱は少しずつ、しかし確実に琥珀の神秘を解き明かすことにつながっているのです。
研究者が解き明かした
健康の為の食品用琥珀エキスと
美容の為の琥珀エキスの効果
食品用琥珀エキス
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Chapter.1
脂肪分解促進効果
脂肪蓄積抑制効果01見た目だけじゃわからない
『内臓脂肪』の増加内臓脂肪は私たちが日常を過ごすために必要なエネルギーの貯蓄です。そのため、エネルギーを使用しない・過剰なエネルギー摂取を行えば脂肪の量は増加していきます。
内臓脂肪が増加すると血液中の中性脂肪も増え、HDL(善玉)コレステロールは減少、LDL(悪玉)コレステロールは増加する傾向にあります。LDL(悪玉)コレステロールの増加は体にさまざまな悪影響を及ぼし、動脈硬化や心筋梗塞といった病気になりやすい体になってしまいます。内臓脂肪は主に腸の周りにつきやすい脂肪ですが、体の外からは見えないので日常生活での予防が大切です。
02脂肪分解のメカニズムと食品用琥珀エキスの働き
脂肪分解のメカニズム食品用琥珀エキスが
作用した場合体内に存在する脂肪は、脂肪分解酵素によって分解されています。分解された脂肪のかけらは、燃焼してエネルギーとして働きます。
03細胞実験における
食品用琥珀エキスの脂肪蓄積抑制効果試験
方法マウス由来成熟脂肪細胞(分化させた3T3-L1細胞)に食品用琥珀エキスを与えて96時間培養した
(A) MTT法で食品用琥珀エキスの細胞生存率を確認
結果食品用琥珀エキス乾固物50μg/mLまでは細胞生存率に影響を与えないことがわかった
(B) パラフォルムアルデヒドで固定後、細胞中の脂肪滴をオイルレッドOを用いて赤く染色
結果食品用琥珀エキスを与える量が増えるほど、赤く染まる部分=脂肪滴が減っていることがわかった
(C)(B)で染色した細胞をイソプロパノールで溶解し、
脂肪滴中のトリアシルグリセロール(中性脂肪)を490nmで測定結果食品用琥珀エキスを与える量が増えるほど、脂肪滴中のトリアシルグリセロールが減っていることがわかった
成熟した培養脂肪細胞に食品用琥珀エキスを与えて培養すると、与えなかったものと比較して脂肪細胞中に蓄積される中性脂肪の量が抑えられるがわかりました。
Sogoら Molecules Vol.26, 4630, 2021より抜粋
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Chapter.2
糖代謝に与える影響
食品用琥珀エキスによる
「糖の吸収を抑える」効果01糖質の摂りすぎによる弊害とは
私たちは、食事を通して炭水化物を摂取します。炭水化物は体内で消化されるとブドウ糖へと分解され、血液中に入ります。この血液中のブドウ糖の濃度が、“血糖値”と呼ばれるものです。 通常、ヒトの体ではホルモンの分泌によって血糖値の濃度を調整しています。しかし、炭水化物・お酒・甘いものを過剰に摂り過ぎる偏った食生活が続くと、ホルモンの分泌が追いつかず“高血糖”と呼ばれる状態になります。高血糖が慢性的に続くと至る病気が糖尿病で、そのほか体にさまざまな悪影響が起こる可能性が高まります。
02糖の吸収メカニズムと
食品用琥珀エキスの働き糖の吸収メカニズム食品用琥珀エキスの
吸収メカニズム食品用琥珀エキスには、炭水化物がブドウ糖に分解される際に必要な糖質分解酵素を、必要以上に作らせない効果(ブロック1)があります。また、ブドウ糖に分解されても、そのブドウ糖が小腸の壁を通過するのを防ぐ効果(ブロック2)があります。2段階の抑制がかかった結果、血液中に入って体内に吸収されるブドウ糖の量は減少します。そして吸収されなかったブドウ糖は、体の外へと排泄されます。
食品用琥珀エキスには、炭水化物がブドウ糖に分解される際に必要な糖質分解酵素を、必要以上に作らせない効果(ブロック1)があります。また、ブドウ糖に分解されても、そのブドウ糖が小腸の壁を通過するのを防ぐ効果(ブロック2)があります。2段階の抑制がかかった結果、血液中に入って体内に吸収されるブドウ糖の量は減少します。そして吸収されなかったブドウ糖は、体の外へと排泄されます。
03細胞実験における食品用琥珀エキスの
ダブルブロック効果A糖の分解抑制
試験
方法ヒト結腸癌由来細胞(Caco-2細胞に食品用琥珀エキスを与えて8日間培養する
⇒細胞を溶解し、糖質分解酵素である
スクラーゼ・イソマルターゼ複合体のタンパク質(以下、SIタンパク質)をウェスタンブロット法で検出した。同様に内部標準としてβアクチンタンパク質を検出した。結果食事として摂取した糖質は、小腸内でSIタンパク質よりブドウ糖となり、血中に吸収されます。食品用琥珀エキスを与えたものはそうでないものと比べて、SIタンパク質の発現が抑制されていました。このことから食品用琥珀エキスには、糖質分解酵素が働くのを抑えることにより、糖の吸収を抑える効果があることが期待されました。特許第6599592号より抜粋
B糖の吸収抑制
試験
方法トランズウェルのメンブランフィルター上で3週間ヒト結腸癌由来細胞(Caco-2細胞)を培養。(※通常、孔径0.4μmメンブランフィルターはブドウ糖を透過させる)
細胞間電気抵抗値が350Ω・cm2以上であることを確認。※
上層にブドウ糖と食品用琥珀エキスを添加して2時間培養。その後下層に移ったブドウ糖量を測定。
細胞間電気抵抗値が350Ω・cm2以上であることを再確認。結果腸管にはブドウ糖を選択的に透過させる膜タンパク質が存在していることが分かっています。食品用琥珀エキスを多く添加した細胞ほどブドウ糖を透過させないことがわかりました。特許第6601860号の実施例を元に作図※細胞間電気抵抗値は、Caco-2細胞間が密着結合しているかどうか確認するための目安となる。50Ω・cm2以上で、密着してバリアを形成していると考えられる。
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Chapter.3
血圧を調整する効果
食品用琥珀エキスによる
「血圧を正常に保つ」効果01日本人に多い
『高血圧』が起こるメカニズム血圧は、自律神経(交感神経・副交感神経)によってコントロールが行われています。外敵から身を守るための“緊急反応”に対応する自律神経(交感神経)は、体を戦う・逃げるといった動きに都合の良い状態にさせる働きがありますが、強いストレスを感じた場合にも同様の反応を起こします。
精神的・物理的ストレスが多ければ多いほど、自律神経(交感神経)の働きは活発になり、心拍数が増加します。つまり心臓から送られる血液の量が多くなるので、“高血圧”となります。そのほかに、塩分の摂りすぎや過度の飲酒なども血圧を上昇させる原因となります。
02血圧上昇のメカニズムと
食品用琥珀エキスの働き血圧上昇のメカニズム食品用琥珀エキスの
作用メカニズム精神的・物理的ストレスにさらされると、アンギオテンシン変換酵素(ACE)が活性化し、血管を縮めようと血圧が上昇※1します。食品用琥珀エキスはこのACEに作用して活性化を抑制、その結果、血圧の上昇を抑えることができます。
※1 実際にはACEの活性化によって発生する物質が血管を収縮します
03細胞実験における食品用琥珀エキスの
血圧上昇抑制効果試験
方法アンギオテンシンⅠ変換酵素(ACE)阻害活性測定キット(同仁化学)を用いて測定。食品用琥珀エキス(乾固物)10mgをジメチルスルホキシド1mLで溶解し遠心後の上清を原液としました。この液を純水で5倍希釈していきました。これらサンプルに、基質と酵素を加えて反応させて生成した物質を定量しました。
結論食品用琥珀エキスの濃度が高くなるほど、酵素ACE(アンギオテンシン変換酵素)活性の阻害率が上昇することがわかりました。食品用琥珀エキスは血圧上昇を抑える食品等に応用できる可能性を有していると考えられました。特許第6548797号の実施例から抜粋
琥珀エキス
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Chapter.1
コハクエキス®リペア(RE)による
表皮・角層のエイジングケア皮膚ターンオーバー促進効果(特許第4953204号)コハクエキス®リペア(RE)は
肌の生まれ変わりを正常に導き、
ゴワついた肌をなめらかにすることにより、
美肌効果を生み出します。ターンオーバーを促進する遺伝子の量
試験
方法正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)にコハクエキスリペア(RE)を添加して24時間培養後に、総RNA採取後、RT反応→リアルタイムPCR法にてターンオーバーを促進する遺伝子(HB-EGF)*)の量を測定しました。※HB-EGFとは:
Heparin-Binding EGF-like Growth Factorの略でヘパリン結合性上皮成長因子という。皮膚の創傷治癒に関わる成長因子です。結果なめらかな肌へ
肌の生まれ変わりを促進コハクエキスリペア(RE)なしの細胞と比較して、コハクエキスリペア(RE)を与えた細胞では、HB-EGF遺伝子の量が増加していました。このことから、コハクエキスは加齢により遅れがちなターンオーバー速度を正常にしていく効果が期待されます。大原ら 香粧会誌 34. 89-101, 2010より抜粋
ヒアルロン酸産生促進効果(特許第4953203号)コハクエキス®リペア(RE)は
肌の水分量を高め、
みずみずしくふっくらとした肌へと導きます。ヒアルロン酸産生酵素遺伝子の量
試験
方法ヒト不死化表皮角化細胞(HaCaT細胞)にコハクエキスリペア(RE)の細胞を添加し24時間培養後、総RNAを採取しRT反応→リアルタイムPCR法にてヒアルロン酸産生酵素3(HAS3)遺伝子の量を測定しました。
結果みずみずしい肌へ
肌のうるおいアップコハクエキスリペア(RE)なしの細胞と比較して、コハクエキスリペア(RE)を与えた細胞では、表皮角化細胞がヒアルロン酸を産生する際に働くヒアルロン酸産生酵素3の遺伝子量が増加していました。このことからコハクエキスには、皮膚がヒアルロン酸を産生して自らの保湿力を高める効果が期待されます。大原ら 香粧会誌 34. 89-101, 2010を元に作図
ヒアルロン酸の染色像
試験
方法ヒト皮膚再構築培養モデル*)(以下、皮膚モデルとする)にコハクエキスリペア(RE)を終濃度25μg/mLになるよう添加し40時間培養しました。その後組織をパラフォルムアルデヒド、グルタルアルデヒドを用いて固定し、ヒアルロン酸を茶色に染色しました。※ヒト皮膚再構築モデル
皮膚は上から、角層、表皮層、真皮層の三層から成っているが、この構造を培養細胞で再現したものをいう。限られた範囲ではあるがヒト皮膚組織の機能を再現している。ヒアルロン酸の染色像
結果コハクエキスリペア(RE)なしの皮膚モデルと比較して、コハクエキスリペア(RE)を与えた皮膚モデルではとくに表皮において茶色が濃くなる、すなわちヒアルロン酸がたくさん作られていることが確認されました。大原ら 香粧会誌 34. 89-101, 2010を元に作図
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Chapter.2
コハクエキス®グロウ(GR)の
育毛活性VEGF遺伝子の増加効果(特許第5858561号)コハクエキス®グロウ(GR)で
処理することにより
VEGF遺伝子が増加しました。試験
方法ヒト不死化表皮角化細胞(HaCaT細胞)にコハクエキスグロウ(GR)の細胞を添加し24時間培養後、総RNA採取し、RT反応→リアルタイムPCR法にて血管新生を促進させる増殖因子(VEGFA)の遺伝子の量を測定しました。
結果コハクエキスグロウ(GR)で処理することにより、、VEGFA遺伝子が増加することがわかりました。これにより毛根周りの血行が増え、太く生き生きとした毛髪となることが期待できます。佐藤ら(国立研究開発法人(現)理化学研究所との共同基礎研究) 日本美容皮膚科学会誌 23. 289-300, 2013を元に作図
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Chapter.3
コハクエキス®ホワイト(WH)の
美肌効果メラニン産生抑制効果(特許第5858562号)コハクエキス®ホワイト(WH)には、
メラニンの生成を抑え、
シミのない肌へ導く効果があります。培養ヒト表皮角化細胞の
エンドセリン-1の遺伝子試験
方法培養したヒト不死化表皮角化細胞(HaCaT細胞)に紫外線を照射してからコハクエキスホワイトを与え24時間さらに培養し、その後総RNAを採取しRT反応→リアルタイムPCR法でエンドセリン-1の遺伝子発現を測定しました。
結果シミのない澄んだ肌へ
コハクエキスホワイトを与えたものはそうでないものと比較して、炎症性ペプチドであるエンドセリン-1の遺伝子発現が抑えられていることがわかりました。このことから、コハクエキスホワイトはシミの元となる炎症をメラニン細胞に伝えるエンドセリン-1を抑えることにより、シミを防止する効果が期待されます。特許第5656582号、社内データを元に作図
PATENT / TREATISE
取得特許 / 論文
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2023
特願2022-10503「歯周ポケット予防又は改善に有用な琥珀含有組成物とその使用」
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2023
特願2022-10502「骨粗鬆症の予防や改善に有用な琥珀含有組成物とその使用」
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2023
Behavioral and Biochemical Evaluation of Anti-Depressive and Oxidative Stress-Ameliorating Effects of Amber Extract in Adult Male ICR Mice
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2023
Amber (Succinite) Extract Enhances Glucose Uptake through the Up-Regulation of ATP and Down-Regulation of ROS in Mouse C2C12 Cells
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2023
Amber Extract Suppressed Mast Cell-Mediated Allergic Inflammation via the Regulation of Allergic Mediators—An In Vitro Study
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2022
Anti-inflammatory activities of amber extract in lipopolysaccharide-induced RAW 264.7 macrophages
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2022
Protective Effect of Amber Extract on Human Dopaminergic Cells against 6-Hydroxydopamine-Induced Neurotoxicity
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2021
Amber Extract Reduces Lipid Content in Mature 3T3-L1 Adipocytes by Activating the Lipolysis Pathway
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2021
Role of amber extract in protecting SHSY5Y cells against amyloidβ1-42-induced neurotoxicity
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2019
特許番号6601860号「グルコース吸収抑制剤」
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2019
特許番号6599592号「αグルコシダーゼ活性抑制剤」
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2019
特許番号6548797号「アンジオテンシンⅠ変換酵素活性阻害剤」
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2019
特許番号6534500号「グリセロール放出促進剤」
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2019
特許番号6534500号「グリセロール放出促進剤」
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2015
特許番号5858561号「琥珀由来のVEGF産生促進剤及び琥珀由来のVEGF産生促進剤を含む製剤又は化粧料若しくは頭髪・頭皮用化粧料」
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2015
特許番号5858562号「琥珀から得られるエンドセリン-1産生抑制剤、SCF産生抑制剤、及びメラニン産生抑制剤並びにその使用」
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2013
琥珀エタノール抽出物によるVEGF発現の亢進ならびに育毛促進作用
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2012
特許番号4953204号 「琥珀から得られる皮膚ターンオーバー促進因子を含有する組成物及びその使用」
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2012
特許番号4953203号 「琥珀から得られるヒアルロン酸産生促進因子を含有する組成物及びその使用」
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2010
琥珀アルコール抽出画分の皮膚ターンオーバー促進、およびヒアルロン酸産生促進効果について
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2006
特許番号3741429号「天然色素で着色した化粧料及びその変退色防止方法」
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2005
特許番号3741429号「化粧料」